イエス様の生涯について申し上げれば、
分からないことがとても多いんです。
イエス様が亡くなって何年か経った後に、
4人の弟子がいろいろな人から聞いた話をまとめたのが
『新約聖書』の福音書です。
この2千年間、その解釈は様々に論じられてきました。
イエス様が生まれた現在のイスラエルの地は当時、
ローマの植民地で、一部の権力ある人たちが力を振るって
一般の人々の生活は困窮を極めていました。
加えて厳しいユダヤの律法によって
細かい規則まで厳密に守らなくてはいけない圧迫と
息苦しさを感じながら生きていました。
貧しい人が盗みなどすれば天罰が下ると脅され、
病を得れば先祖が悪いことをしたからだと苦しめられる。
そういう罪という考えが社会全体を支配していて、
人々を縛りつけている社会だったんです。
世界中の困難や苦しみが、
この国に凝縮されていたといえるかもしれません。
イエス様が真冬に馬小屋で生まれたことはよく知られていますが、
希望のないイスラエルの地で、イエス様もまた
人間が味わう最も苦しく辛い立場で人生をスタートしたわけです。
当時、最も差別され蔑まれていたのが羊飼いでした。
心の素直な羊飼いたちは
この国にメシア(救世主)が誕生したという啓示を受け、
天に輝く星を見てそれを悟る。
同時に社会的地位のある博士たちも
イエス様のもとに集まってきました。
地位や貧富というものを超えて、
どのような人をも救おうとしたイエス様の生き方が、
そこにも象徴されているように思います。
イエス様が育ったナザレという町は、
周辺の砂漠とは違って美しい花が咲くオアシスのような場所でした。
イエス様は五歳の頃には既に知恵者になっていて、
子供の頃から神殿で教えるくらいの力がありましたが、
30歳になるまで人の目にもつかず大工として生活します。
それ以降は貧しい人たちと共に歩む生活をしながら、
それまでのユダヤ社会にはなかった
新しい教えを述べ伝えていきます。
人々を縛り苦しめてきた厳しいユダヤの律法に立ち向かい、
そこから人々を解放することを始めるんです。
イエス様が伝道を始めて、十字架で亡くなるまでの3年間を
公生涯と言いますが、
この公生涯の中でイエス様は病で苦しんでいる人を癒やしたり、
盲人の目を見えるようにしたり、
たくさんの奇跡を起こしました。
実際に多くの奇跡を起こしたことは確かだと思いますが、
それまで虐げられた人が
イエス様の愛によって初めて人間らしく扱われ、
心が解放された喜びや心の変化が
そういう奇跡に結びついたことも多かったのではないかと
私は考えています。
イエス様がこの3年間の公生涯で説き続けたことを
ひと言に凝縮すれば、
「あなたたちは一人ひとり神様から創られ、
愛された大切な存在である。
だからお互い同士を虐げたり差別したりすることから
解放されなくてはいけない。
一人の人間として真に自由に生き、
皆をも大切にすることが大切である」
ということだと思います。
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